差。





止まった時にゆっくりと空を見上げた

有り余る時間

目の前の男の事しか考えられない



「シキ、今日も綺麗な青空だよ」

そう言いながら、アキラは静かにシキを見つめた。

大輪の華の様に美しい顔に感情を何も映し出さないまま、小さな衝撃に僅かに傾いだ首。

日の光に全く照らされないまま、真っ白な喉元が視線の元に晒される。

あの時、ナノが連れて行きたかった人物は自分ではなく本当は、

このシキだったのではないかと今でも思う。

死んでしまった今は彼に何も問う事は出来ないが。

命と引き換えに、ナノは自分の一番欲しいものを持っていってしまったような気がした。

それはアキラが欲したものと同じで、

先を越されたとか完敗だったとか

そういう類のものではないけれども。

似たような嫉妬がアキラの胸を昏い焔がジリ…と焼いていた。

「………アンタは、きっと、最初からナノのものだったんだね」

小さな苦笑を洩らしてアキラはシキの艶やかな黒髪をそっと撫でながら独りごちる。

出逢う時期が自分の方が遅かったから。

せめてシキの心全てがあの男で真っ黒に塗り潰される前に出逢えていたのなら。

抗えない運命だと言い聞かせても、悔しさは拭えない。

早い者勝ちだとは思っていない。

だけれども、ナノより早くシキに出逢えていたら……

「アンタを、こんな風にさせる事なんてなかったのかな?」

車椅子の背後から優しくシキを抱き締めて呟いたその言葉は、

人形のように動かない、けれども温かなシキの耳元に確かに届けられたはずなのに。

その鼓膜を震わす事無く、空気に溶けて消えていった。



シキ、俺はアンタの事………

待ってるから

だから必ず、帰ってきて

他でもない、俺の傍に



ED1でアキラ→シキVER.でございます。

何と言いますか、良くあるお話です(キッパリ)

ナノは何を考えているのか分からないけれども、

シキがあそこまで憎んでいるのは愛情の裏返し

だろうと勝手に深読みして作成してみました。



このSSは引越前にずっと置きっぱなしにしていた

ものです。。。自分、サイテー。。。



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